Tig溶接機とファイバーレーザー溶接機の違い
Tig溶接機とファイバーレーザー溶接機は、どちらも金属の溶接に使用される産業機器ですが、原理や使用方法において異なる点があります。
Tig溶接機とは
Tig溶接機は、従来の溶接方法であるアーク溶接の一種です。 TIGはTungsten Inert Gas(タングステン・イナート・ガス)の略称であり、高融点のタングステンを用いた電極棒でアークを発生させ、フィラーを溶融しながら母材を溶接します。 Tig溶接機は、精密な溶接に適していて、溶接後の仕上がりも綺麗という特徴があります。
一方で、電極棒を操作しながら、もう片方の手でフィラーを送るなど、操作には技術を要するため、熟練した溶接技術者が操作することが多いです。
また、Tig溶接機は、ファイバーレーザー溶接機と比べると溶接速度が遅く、大量生産には向かないという特徴もあります。
主にTig溶接機は、その高品質で精密な溶接により、航空産業、自動車産業、食品産業、医療機器製造、アート作品やデザイン製作など、高度な溶接技術が求められる産業で重要な役割を果たしています。
ファイバーレーザー溶接機とは
ファイバーレーザー溶接機は、Tig溶接機よりも後に誕生した新しい溶接方法で、より大量生産・高品質な溶接に向いている装置です。 ファイバーレーザー溶接機では、ファイバーケーブルを介して非常に高いエネルギー密度のレーザー光を生成し、金属を瞬時に溶かすことができます。そのため、より高速で効率的な溶接が可能になります。
また、レーザー光は非常に小さな焦点に集約されるため、細かな部分の溶接や、熱影響による母材の歪みや変色を抑えたい溶接にも適した溶接機です。Tig溶接と比べて熱影響が少ないため、薄板にもきれいな加工ができます。
ファイバーレーザー溶接機は、SLW1500のように溶接ワイヤーを自動で送ることもでき片手で簡単に操作ができることから、溶接経験の浅い方や初心者の方でも無理なく扱えるという点もメリットの1つです。
近年、ファイバーレーザー溶接機を導入する産業はますます増えています。特に、高速かつ正確で高精度な溶接が求められる、製造産業、電子機器産業、医療機器産業、宝飾品産業など、幅広い業界で活躍しています。
Tig溶接機とファイバーレーザー溶接機の比較
1. 動作原理
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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タングステン電極を使用して発生させたアーク熱で金属を溶かす。溶接には溶接棒(フィラー)が必須。 | 高出力のファイバーレーザー光で金属を溶かす。溶接棒(フィラー)がなくても溶接が可能。 |
2. 溶接速度
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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エネルギー密度が低く、溶接速度が遅い。溶接作業は比較的時間を要し、厚い金属板の溶接には時間と技術が必要。 | エネルギー密度が高く、溶接速度が非常に速い。レーザー光が瞬時に金属を溶かすことができるため、大幅に効率的で迅速な溶接が可能。 |
3. 溶接品質
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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溶接品質は高い。手動操作により、溶接技術者が細かな制御を行いながら精密な溶接ができる。 | ファイバーレーザー溶接も溶接品質は非常に高い。特に、微細な溶接や複雑なパターンの溶接が得意。 |
4. 溶け込み
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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浅い。溶け込みを深くするためには長い時間をかけて熱を加える必要があり、余分な熱が横方向に広がるため母材の歪みや変色が生じる。 | 深い。高密度のレーザー光が速く深く母材に伝わるため、Tig溶接機より熱影響が広がらず歪みや変色が抑えられる。 |
5. 操作と自動化
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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操作に熟練を要するため、経験豊富な溶接技術者が必要。自動化は難しく、主に手動操作に依存する。 | 高度な自動化に適している。コンピュータ制御により、精密な制御や溶接パターンの設定が可能。また、ロボットと組み合わせて自動化された溶接プロセスを実現することができる。 |
6. 溶接に適した素材の厚み
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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薄板から厚板まで対応。ただし、薄板の場合は穴が空きやすく歪が激しく発生しやすいため、かなりの技量が求められる。 | 薄板に適している。高出力の溶接機であればある程度厚い板も対応可能。 |
7. コスト
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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導入コストは比較的安いが、ランニングコスト(電気代)はファイバーレーザー溶接機より高くコスト効率が下がる。 | 導入コストは比較的高いが、ファイバーレーザーは長寿命のため長期間安定して使用できる。また、ランニングコスト(電気代)はTig溶接機の約1/5に抑えられる。 |
溶接速度の違い、溶接結果の歪みについて
厚さ2mmの鉄(SPC)、100mmの溶接を行った際の時間と歪み量を比較しました。
Tig溶接機 | ファイバーレーザー溶接機 |
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溶接時間は約1分。固定治具を使用し溶接を行ったが歪みが発生した。 | 溶接時間は約6秒。固定治具を使用せず溶接を行い、若干の歪みが発生した。 |
溶接結果の比較
左:Tig溶接機 右:ファイバーレーザー溶接機
歪み量の比較
左:Tig溶接機 右:ファイバーレーザー溶接機
動画でも溶接結果を比較しています。
まとめ
以上、2つの産業用溶接機についてご紹介しました。ファイバーレーザー溶接機は高速かつ高効率な溶接が可能であり、高品質で複雑な溶接にも適しています。一方、TIG溶接機は手動によって精密な溶接ができるものの、溶接速度や自動化においては劣ることがあります。
どちらも精度の高い溶接ができる溶接機ですが、加工スピードをあげたい、熱影響を抑えた加工がしたい、初心者でも高品質な溶接がしたい、といったお悩みをお持ちの方にはファイバーレーザー溶接機をおすすめします。
弊社のファイバーレーザー溶接機【SLW1500】に関する詳しい情報は製品ページでご紹介しておりますので、宜しければご覧ください。