皆さんこんにちは!先月、Etcher Laser Pro(以下ELP)の予約を開始しましたが、大変ありがたいことに好調な売れ行きとなっております。ELPはオールインワンタイプのため、消炎キットや排気ファンキットといったオプションは必要ないのですが、唯一のオプションとして「1インチの集光レンズ」をご用意しています。特になにもアナウンスせずにしれっと販売していましたが、1インチレンズと標準のレンズで何が違うのか、今回説明させていただきます。
結論から言うと刻印をメインに行う方は1インチレンズがおすすめです!
集光レンズの役割と仕組み
まず違いを説明する前に、レーザー加工機における集光レンズの役割と仕組みを説明します。
集光レンズの役割
レーザー発振器から照射されたレーザー光はレンズを通って素材に照射されます。なぜレンズを通す必要があるかというと、レーザー光をより密度の高い光に変換して精細な加工を行うためです。小学校の理科の実験でやった虫眼鏡で太陽の光を集めて紙を焦がす、と原理は一緒です。
集光レンズの仕組み
レンズには「焦点距離」「焦点深度」「スポット径」という3つの要素があります。
まず「焦点距離」、レンズから最も光が集る「焦点」までの距離です。この焦点がしっかり素材に当たる距離で加工を行わないとうまく加工ができません。レーザー加工の使い方でよくでてくる「高さ調整」という作業は、この焦点を素材に当てるための距離の調整ということになります。
次に「焦点深度」です。焦点が合っている範囲になります。ちょっと語弊があるかもしれませんが、カメラで言うピントが合っている範囲と思ってください。
最後に「スポット径」です。これは焦点部分においてどのくらい光を絞り込んでいるかを表す言葉です。簡単に言うと光の直径ですね。レーザー加工は点を細かく照射することで写真やイラストを表現しますが(点描のようなイメージです)、この一つ一つの点の大きさがスポット径によって変わってきます。
一般的に、焦点深度とスポット径は焦点距離に比例するため、焦点距離が長くなると焦点深度とスポット径が大きくなる、焦点距離が短くなると焦点深度とスポット径が小さくなります。
レンズによって焦点深度が異なるため、レンズが変わると加工結果もおのずと変わってきます。
集光レンズが違うと加工結果にどう影響するのか?
では集光レンズが違うと加工結果にどう影響するのか解説します。
ELP用に用意しているのが、1インチレンズと2インチレンズ(標準)となります。このインチは焦点距離を表していて、焦点距離が1インチの短いものと2インチの長いもの、ということになります。上記で解説したように、焦点深度が短くなるとスポット径が小さくなる、つまりレーザーを照射した際の点が小さくなるため、1インチのレンズのほうが細かい加工ができる、ということになります。
実際にELPを使って1インチと2インチの写真加工をしてみました。同パラメータで試してみましたが、1インチのほうがよりはっきりと刻印されています。
小さい文字を加工すると、若干ではありますが1インチのほうがはっきりしてます。
じゃあ、1インチを常に使ったほうがいいのでは、という話になってしまいますが、2インチのほうが優れている部分があります。それは切断加工です。
焦点距離が長いと焦点深度が大きくなります。焦点が合っている範囲が大きいということは、レーザー光が集まっている範囲が大きい(エネルギーが伝わる範囲が大きい)ということなるので、厚い素材をカットする場合は2インチレンズの方が良いということになります。同じ素材をそれぞれのレンズで切断加工したところ、2インチの方がスピードを早く設定できたため、加工時間は短くなりました。
また、レーザー光は上記イラストのようにテーパー状(先細り)で素材に到達します。そのため、素材の表と裏に寸法差がでてしまい、切断面も少なからず斜めになってしまいます。この切断面の斜めは素材が厚いほどはっきりとでてしまいますが、角度Aが浅ければ浅いほどこの斜めを軽減させることができます。焦点距離が長いほど角度Aを浅くできるので、切断加工には2インチレンズのほうが向いているということになります。
まとめ
刻印加工を多くする方は1インチレンズがオススメですが、2インチレンズも劣っているというわけではなく、刻印・切断能力のバランスが良いため標準レンズに採用しています。また、加工によってレンズをそれぞれ使い分けるのもいいかと思いますので、ご自身のやりたい加工によってレンズを選んでいただければ幸いです。
集光レンズセットについて
ELPのレンズ交換はお客様自身で行っていただきます。レンズはレンズマウントに取り付けますが、レンズは直径約1cmと小さいため、交換が若干手間なんですね。たまにレンズのクリーニングなどで取り外すくらいでしたら問題ないのですが、加工方法によって頻繁にレンズを交換する方は、レンズマウントごと交換したほうが早いため、集光レンズセットの購入をおすすめします。