今回は2017年の9月に行われた第57回全日本模型ホビーショーの弊社ブースにて展示した鉄道模型の製作者 石井 伸明さんにFABOOL Laser Miniの使用感や作品について詳しいお話を聞いてみました。
バリエーションの幅と製作スピードが大きく変わりました
ー まず、レーザーカッターを使い始めたきっかけを教えてください。
鉄道模型作りは50年程前からやっているのですが、製作過程の中でカッターやハサミでは絶対に実現不可能な切断が数多くあり、レーザーカッターという加工方法を取り入れるまではそれらを全てあきらめていました。FABOOLの導入を検討する前は航空べニアのレーザーカット等を外注でお願いしていたのですが、それなりに費用がかかるという点と依頼してから仕上がりまである程度の時間がかかるという2点でなんとか自宅の作業場でできないものかと考えておりました。
そこで個人向けのレーザーカッターを探していたところ、タイミングよく御社のFABOOL Laser Miniがクラウドファンディングを実施するという情報を見つけ支援することを決めました。
ー 購入(支援)の決めては何だったのでしょうか?
やはり価格と性能ですね。私の模型製作において3.5Wの上限である4mmまでの切断ができれば十分だったので。また価格的にもし期待通りでなかったとしてもあきらめがつく値段だったのもあります(笑)。
ー 実際に使ってみていかがでしたか?
バリエーションの幅と素材選び、製作スピードが大きく変わりましたね。
先程もお話しした通り今までは絶対にできないとあきらめていた細かいパーツが手元で作れるようになった上に外注する必要もなくなったため、レーザーカットして模型に当ててみてサイズが合わなかったらすぐに再調整なんてことができるんですよね。これは製作のスピード感とアイディアをすぐカタチにできるという点で非常に大きなメリットだと思います。
また、4mmまで(※3.5Wモデル使用)という切断できる厚さへの制限があったおかげで逆に積層の可能性を再認識しました。今までの手法に積層を加えることによってより細かい部分の表現ができるようになりましたね。
ー 具体的にどんな感じに積層を活用されるのでしょうか?
作るモノにもよりますが、同じ形のものを7~8枚程切り抜き、瞬間接着剤で接着しながら積層して万力で挟み固定します。乾く頃にはプラスチック並みに固くしっかりとした形状のパーツが出来上がりますのでこれをやすりで調整して使います。同様の作業を繰り返しながら多数のパーツを製作していくわけです。この手法使えば市販されていないパーツが手軽に作れますが瞬間接着剤を湯水の如く使います(笑)。
ー なるほど。とても地道な作業ですね。でもこの手法を使うことによって細かい段差や建物の質感を表現できるということですね。
ー 現在使用している素材を教えていただけますか?
バルカナイズドファイバーの0.25mmと0.5mm、シナベニアの1.3mm、1.6mm、共芯べニアの1.5mmを使い分けています。
ー バルカナイズドファイバーとは・・・??
絶縁特性を持っている特殊紙で電子部品のねじ止めにワッシャーとしても使われている素材ですね。レーザー加工時に焦げが出にくく、厚さのピッチも細かく販売されているので私のような使い方には合っていると思います。
ー 少し気になったのですが模型に使われている草花ですがこちらもレーザーを活用されているものですか?
こちらは本物ですよ。
ー 本物ですか!?
私は八ヶ岳へ出かけることが多いのですがその際、散歩をしながら模型に合いそうな草木を探しては持ち帰り、プリザーブドフラワーと同じ加工をして模型に使用しています。
ー なるほどプリザーブドフラワーですか。
やはり自然が作り出されたものの素晴らしさにはかなわないですね。神は細部に宿るといいますからね。模型作りの中でもこういう部分は特に大切にしたいですね。
レーザーカッター無しでは作れない作品
ー 最近はどんなものを製作されましたか?
こちらの火の見櫓です。
ー これは非常に細かいですね。製作にはどれくらい時間がかかりましたか?
6~7時間くらいかかりました。
ー ちなみにこれをFABOOLを使わずに作ったらどれくらいかかりますか?
絶対に不可能ですよ(笑)。これはバルカナイズドファイバーと一部真鍮で作っているのですが切り出しの時点で既にレーザーカッター無しでは不可能です。
ー 一番手こずった部分はどこですが?
バルカナイズドファイバーも紙なのでとても曲がりやすいため組み立てが大変です。
ー こちらの火の見櫓も含めて普段の製作手順を聞いても良いですか?
私が作る模型は全てが手作りなので、当然組み立てに関する説明書などありません。写真撮影や資料探しからスタートになります。実物が現存している建物の場合は現地に足を運んで写真を撮ったり、実物がない場合は過去の文献や写真を元に図面を起こし、それを1/48へスケールダウンし模型用に設計図を作成し、レーザーカットしています。
模型作りを楽しむ人にとって導入するメリットは大きい
ー 加工用のデータはどのように作成されていますか?
データ作成はIllustratorです。
ー もともと使用されていたんですか?
はい。ver.3から使用しています。
ー なるほど。ではデータ作成においてアイディアを形作るのにそんなには時間はかからなかった感じですね。普段データ作成にどれくらい時間をかけますか?
モノにもよりますが4~5時間くらいですかね。データを起こす際もレーザーカッターで実際に加工して仕上がったものを確認してNG部分に手直しを加えてといった感じに何度か繰り返すので、実際には加工と並行して行う感じです。
これこそレーザーカッターが手元にあってこそできる製作方法ですね。購入した金額と天秤にかけてもこのメリットは遥かに大きいモノだと思います。smartDIYsさんがテーマに掲げる「新しいモノづくりの世界へ」の通り、正にモノづくりが変わったと思います。
ー ありがとうございます。そこまで言っていただけると我々もレーザーカッター屋冥利に尽きます。
レーザーカッター購入後は友人からちょっとした切断などを頼まれることも少なくありませんが、私自身の経験や実際の作品においても良い意味で大きな変化があったので鉄道模型仲間にも積極的に購入を勧めていますし、データ作成方法をレクチャーすることもあります。
全くの初心者にIllustratorというと身構えてしまう人もいますが、実際、鉄道模型の製作で使うデータにそんなに複雑な図形を必要としないんですよ。なのである程度の基本操作を覚えるだけでも十分オリジナルのパーツが作れるんです。
ー FABOOLの営業をして頂いている上にデータ作成の講習会までしていただいているんですね!本当にありがとうございます!
いえいえ。でもレーザーカッターの魅力はそのくらい価値のあるものだと思いますよ。模型製作のスタイルや考え方によってはレーザーカッターを使ったら模型作り本来の面白さが損なわれてしまうと考える方もいますが、装置が切断をやってくれればその分、別の作業に時間を割くことができるのでやはり模型作りを楽しむ人にとって導入するメリットは大きいと思います。
ー 本当にありがとうございます!
ー 現在FABOOLを使う際に行っていることや裏技なんかありますでしょうか?
裏技ですか・・・。特にコレといってありませんが・・・(笑)。私は安全カバーも使用していて底板が鉄板なので加工対象物を固定するため超強力な磁石を使っていますね。裏技って程でもないですが切断後の素材がレーザーヘッドに引きずられて動いてしまったりのを防げるので結構便利です。あとは定期的にレーザーヘッドのレンズクリーニングなんかもしています。
ー ちなみにFABOOLにこんな機能がほしいという要望はありますか?
Z軸方向の自動化で深さ調整ができる掘り込み加工がしてみたいですね。レーザーでCNC的な使い方ができたら面白いと思います。
ー 深さ調整ですか。確かに石井さんの使い方ですと可能性はグッと広がりそうですね!いただいたご意見は開発チームにフィードバックさせていただきます。
ー 今後の予定や実現してみたいアイディアなどはありますか?
現在、調整中ですがFABOOL Laser CO2を導入したのでスペック的にMiniでは実現できなかったアイディアに挑戦してみようと思います。
ー CO2であればMiniとは違った使い方ができるので活用方法も変わりそうですね。
はい。上手く使いこなせるかわかりませんが頑張ってみます。
ー 今からどんな作品ができてくるのかとても楽しみです!
こちらも御社の取り組みには注目していますので頑張ってください。
ー ありがとうございます!では本日のインタビューは以上になります。今日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございました。